NHKの海老沢会長が辞任したあとでも、NHKの受信料の不払いはとどまることはない。これまでオレは一度も払ったことはない。辻野も同じだろう。しかし、7時のニュースは、ま、みている。知っている奴(記者)がテレビにでていると、それを翌日にネタとしてからかって、酒を驕らせるためだ。 未払いといえば、松永もそうだとおもったら、確か、元妻か、前妻がNHKの関係者の関係者で「それで払っている」と酔っ払って話しているのを聞いた。ま、なんと、いい加減なボスだろうと、オレはおもったが、このいい加減さが、オレには居心地がいいのだ。  さて、このNHK問題・・・ 政治記者なら、「権力移譲」は進んだのか?という視点で書くべきだし、書いて欲しいとおもっていたのだが、誰も書かないので、かわりにオレが書く。クレームきたら、削除する。(プログでつまらん裁判おこすなよ・・・というのが、いい加減なボスの唯一の命令らしい命令だからだ。さらに「どうせ訴えられるなら、デカイ奴たのむ・・・」というのも社命だ。これはどう考えても、デカクなりそうにないので、直ちに、謝罪文書いて、削除する)   NHK権力移譲・・・・  今回のNHK会長騒動、実は政界ではまったく別の見方をしている。 それは、小泉首相の出身派閥である森派・清和会の閣僚の経験者がこのように端的に表現する。 「NHKは、旧田中派以来の、郵政族をしきったいた経世会の牙城だった。これまで旧福田派・清和会にとってはまったく手をふれることもできなかった。 小泉政権の誕生、そして、郵政民営化の話がすすむにつれて、経世会の郵政族がその力をなくしていった。そのシンボルが野中広務だったし、海老沢NHK会長だ。 野中が引退し、郵政族は古賀誠らの、抵抗派に引き継がれたが、郵政民営化を阻止できないとおなじように、抵抗派の牙城であった郵政族は没落していき、その政治力を背景にしていた海老沢会長がふくろ叩きにあって辞任する。これからのNHKは、官邸、および清和会の意向を無視できなくなるだろう」  朝日新聞の報道に端を発した政治のNHKへの介入。しかし、永田町の常識では、「NHKは時の郵政族のいいなりで、時の郵政族を牛じった派閥がNHKに睨みをきかすことができる。政治介入というレベルではない、NHKの経営幹部は政治の意向そのものの人事をうける」(郵政大臣経験者)  この話をわかりやすくするために、海老沢会長の経歴と、海老沢氏がNHK会長に就任した経緯、そこに流れていた政治の流れをおさえれば、一目瞭然だろう。  「エビジョイル」とも、「海老沢天皇」ともいわれれる海老沢勝二NHK会長。 シマゲジこと島桂次(元NHK会長・故人)とも比較されるがその人なりは、まったくちがうというのは、NHKのOBの一人。 「島桂次元会長は一方的人事登用を行なったが、同じ政治部出身の海老沢会長はそれ以上の独裁的な人事をおこなった。 滋野武(報道担当)、関根昭義(編成担当、経済部長も歴任)、山田勝美(経営計画担当)など、自分の『子飼い』である政治郎記者出身の者を理事(全8人)に据えた。  海老沢氏は自民党の旧経世会(=現、橋本派)とのパイプでのし上がってきた人物だ。 海老沢体制では、NHKは旧経世会の広報機関で、何を頼まれていても不思議はない。 一部、現場の良心的記者、ディレクターなどがいても、特定の問題を扱おうとすればストップがかかったり、すぐ地方に飛ばされるのだから、どうしようもない恐怖政治だった」  このOBの一人によると、このシマゲジ以上の独裁者ぶりは、ひとつにシマゲジとの確執にあったのでないかというのだ。 「海老沢さんが、外務省(霞クラブ)担当だったときに、そこのキャップが島桂次さんだった。島さんはあだ名をゲジと言われていたぐらい、仕事のやり方、人への接し方など余りよくない。それでケイジがゲジゲジになった。 シマゲジよりも、温和しい性格で、背は高く肩が張ってぎょろ目だが、潮来なまりの抜けないせいか、話し振りは優しかった。 島さんは部下を権力的に扱う人だった。飲み屋へ、酒ののめない海老沢さんを連れて行って、酒を無理強いしたことがある。 温和しそうだが海老沢さんも剛の者。グイグイと呑んで気を失い、救急車で担ぎこまれたこともある。 こんな島さんに対して海老沢さんは終始、忠誠を尽くしたとおもう。島さんの後について報道局長、理事と出世した。 しかし、あるとき突然、島会長にクビを斬られるんだな。ここで海老沢さんはかわったのでないか?この時の恩讐というか、これがトラウマになって、後の海老沢独裁体制をつくったんじゃないだろうか? この時、海老沢さんは、関連団体の長に飛ばされた。実はこの人事は、島直系の海外特派員三人がモスクワに集まって戦略を練ったと言う話もその後つたわってきた。 島さんにすれば腕の立つナンバー2を左遷する、後継者と世間が見始めた者を斬るというのは権力維持、長期体制を目指すものの普遍的なやり口なのだろう。だから当然と思ってやった。しかし、この経験が、今の海老沢さんを形成したともいえる。 そういえば、島さんは政治記者としては海老沢さんを軽んじていた。 海老沢さんにはかつて担当した田中派の野中広務がいた。その後ろに金丸信がいて、郵政族を支配していた。島さんから見れば金丸も野中もキャリアの少ないヘッポコ議員にみえたはずだろう。郵政大臣の関谷勝嗣に挨拶に行けといわれて、なんでだ、あいつタクシー汚職の関谷勝利の倅だろ、あっちから挨拶に来たらどうなんだ、ぐらいの気位があったろう。いずれ郵政省との関係は良くなかった。逆に、ここが、海老沢会長誕生の布石になる。その辺は、理事に抜擢された元政治部の人だというのは、暗黙の了解事項だ。 海老沢直系の政治部記者は、かねて仲のいい野中を通じて郵政族に火をつけた。『島はオレたちを舐めている、生意気だ。けしからんと、島を国会でしつこく追及、とうとうクビにしてしまった』 この間、海老沢は絶対表面に現れなかった。この辺が巧妙といえば、巧妙だ。そして、後はタナボタ式に会長ポストは海老沢のものになった。 茫洋としているように見えて目は隅々にまで達しているし、記者時代の人脈の豊かさでは社内で右に出るものはないだろう。それでいて経営は黒字なのだから海老沢氏に難癖をつけられるもの内外に乏しかった。 近い昔は浮いた話も有ったらしいが側近が処理した、蒸し返されることない、処理してくれた奴はその後然るべく登用している」  海老沢氏の前の会長、島桂次元会長は、政治記者としては旧宮澤派・宏池会との関係が長く、そこから当時の旧田中角栄元首相と昵懇になる。宏池会出身の大平赳夫が首相に就任したころが、いわば島氏の政治記者としての全盛期だ。田中角栄をしっていれば、竹下登、金丸信は、島氏からみればこぞっこになるかもしれない。 竹下氏が田中角栄と袂をわかち、経世会を旗揚げしたときに、竹下、金丸、小沢一郎が島氏に極秘に連絡をとっていたという話は、政治部記者の間では有名な話だった。 いわば、島氏は、田中角栄、大平元首相、竹下、金丸、小沢一郎という時に政治の権力者であるとともに、郵政族のドンである経世会を背景にして、NHK内でも政治力をつよめてNHK会長に座にのぼりつめたことになる。 この時、海老沢氏が雄一もったいた人脈が茨城人脈だったというのは有名な話だ。  NHKのOBがいう。 「海老沢が茨城県出身ということもあって、『茨城人脈』はNHKに強い影響力を持っていました。『西湖会』という茨城県出身者の親睦会があるほど。その起源を遡れば、茨城県出身で『自民党郵政族のドン』と呼ばれ、免許制の放送業界が誰も逆らえなかったという故橋本登美三郎代議士(旧田中派)の存在がある。会長就任7年目に入り、NHKと放送業界に君臨する海老沢は、『茨城人脈』を中心に自らの権力構造を固めたのですよ」  海老沢氏が、この橋本登美三郎人脈が後の郵政族のドンにのしあがる野中広務との人脈を盾にして、島一派をおいだし、NHK会長に就任するのだが、ここでも政治の動きはきってもきれない関係になるのだ。  NHKの元政治部記者がいう。 「島さんが会長時代というのは、竹下、金丸の全盛期です。これぞ、まさに島さんの権力の源泉です。ところが、リクルート事件、佐川急便事件で竹下、金丸の意向は急速におとろえていく。 おもしろいことに、このリクルート事件を最初にスクープしたのは朝日新聞ですね。佐川急便事件の報道でも朝日新聞は先頭を走った。だから、NHKと朝日新聞というのは因縁深いのですよ。(笑) 島さんのおもしろいところは、見切りの速さなのです。リクルート事件、佐川急便事件で竹下、金丸が落ち目になったとさっしたのが、当時のHNKの司法クラブにかなり自由に報道させた。これを知って、竹下、金丸が圧力をくわえようとしたのですが、時流にはさからえない。 そして、これに端をはしって、小沢一郎らが経世会を割り、さらに自民党をでてしまう。いわゆる新生党ができて、新進党ができる。島さんは、この小沢一郎を新しい政治権力のトップとして、大幅にテコいれるするのですよ。小沢あっての、島さんというよりは、島会長あっての、小沢一郎といったほうがいいかもしれない。それくらい政治家とは密着していました。政治介入?そんな生やさしいものではありません。まさに政治と、政変と表裏一体なのです」  そして、新進党の解党。小沢一郎の凋落。ここから台頭してくるのが、海老沢会長なのだ。 「小沢一郎に対して、うらみ骨髄で、その先頭にたって、戦いに望んだのが、野中広務です。落ち目になった経世会、そして自民党をたてなおそうとやっきになった。 野中は、郵政族ですから、新進党が政権を離脱した段階で、強烈に島会長のNHKに圧力をくわえた。今回の海老沢会長とおなじように、当時の島会長のスキャンダルが次々ながれる。 島会長の後ろ盾であった小沢一郎グループはどんどん、おいこまれてくる。かわりに台頭してきたのが、野中広務です。 そして、海老沢がNHK会長に就任するのですよ」  NKH会長と、時の政権。これは、政変をともない就任したり、辞任したりする。 だから、NHKの政治部では、「政変が先か、うちが先か」と冗談交じり、自嘲気味に語られてきた。  そして、今回の政変と、会長人事なのである。  冒頭でかたった森派・清和会の閣僚の経験者の話になるのだ。  では、新NHK会長は、森派・清和会の配下、つまり小泉政権の配下におさまる体制になるのだろうか? 「ポイントは安倍晋三の同行でしょうね。森派のドンである森前総理は、すでにポスト小泉体制を、福田康夫前官房長官か、安倍晋三幹事長代理ですすめていこうとしている。 当然、報道の要であるNHKの人事、体制も頭の中にはいっているでしょう」というのは、森派の中堅議員。 「小泉首相は郵政民営化をとなえ、推進することで、これま旧田中派、経世会とうけつがれてきた郵政族の影響力をことごとくつぶしてきた。昨年、野中広務氏の引退が象徴ですね。 小泉首相・森派が新しい、郵政族のドンとして君臨するのは間違いないでしょう。それは、イコールNHKを配下におさめるということなのです」(前出、森派の閣僚経験者)  今回の海老沢会長辞任は、単なるNHK内の抗争や、政治介入があったかどうかのはなしではないのだ。 政変・政治の流れが確実にかわったといえるその証拠だともいえる。 文責・北岡隆志 敬称一部略。