えーと、ボスからの宿題であった「小泉政権・再軍備」がやっとこさ、まとまりました。ので、3回にわけて掲載。反論、批判大歓迎です。 
 
 「改革」を掲げた小泉首相。小泉首相が仮想敵というか、最大の抵抗勢力という位置づけをしたのが、旧田中派(旧経世会)だった。この仮想敵との政治抗争で、ほぼ勝利をおさめた最大のバックボーンというか自信のよりどころは、小泉政権の隠れた最大の政治課題である「日本国自立」=「日本再軍備」でなかったのか?という見方がひろまっている。
 その是非をみるまえに、まず、現状をさりげにみてみよう。
 野中広務、古賀誠、加藤紘一(かってはYKKで一緒だったが完全に袂を別れた)らは、親中国派であったり、北朝鮮融和派のながれをついできた。
 この親中国派の特徴というと、旧・田中派のながれをつぐ利権構造をその政治権力の基本として、対外政策に関しては、ハト派路線をつらぬいてきた。
 加藤紘一は、旧・田中派の流れはつがないけれど、田中・大平の蜜月時を継承する宏地会の流れをついでいる。ハト派路線、親中国派のながれをつぐ代表格とみていいだろう。(福田康夫も、その流れにつながる。この辺に、福田vs安倍のポスト小泉をみてもおもしろい分析ができるかもしれない)
 
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 旧田中派(旧経世会)の基本は、外交、防衛よりも、経済優先。経済発展優先。そのための政官民のピラミッド型の利権構造をつくりあげていった。対外政策的には、米国依存はかわらないものの、中国、北朝鮮に対して融和的な政策をとる。
 これが小泉政権の仮想国内敵である旧田中派の実像だったのかもしれない。

 小泉政権が誕生したときに「自民党をぶちこわしても、改革をやりとげる」と啖呵をきったが、それは、旧既存権力がきずきあげた政官民の利権構造をぶち壊すことを意味していた。国民の多くは、この小泉首相の姿勢に喝采をおくった。「改革の小泉」があたらしい姿の日本をつくってくれると。
 しかし、もうひとつの政治的な意思があったことを見逃していたことになるかもしれない。

 それを見抜いていた一人は、中曽根康弘元首相だった。
「小泉君が、戦後政治の決算のしめくくりをしてくれるかもしれない」
 中曽根元首相は、「日本列島浮沈空母」発言にみられるように、日米関係の基軸を、日米軍事同盟にあると喝破して、日本独自の軍備の再編の道筋をつくった。
「憲法改正のための議論が、議論でなく、小泉政権のもとで具体化することをのぞむ」
「日本の戦後政治の決算とは、ひとつに南北問題の解決が前提になる。世界をみてもわかるように東西問題はベルリンの壁の崩壊、ソビエトの崩壊で解決した。いまだに第2次世界大戦の前後処理がされていないのは、極東アジア。つまり日本だけである。北朝鮮との国交正常化。ロシアとの和平交渉。これが、日本がさけてとおることのできない南北問題である」
 と中曽根首相はたびたび、発言し、そして小泉首相にエールをおくりつづけている。

 小泉首相の靖国問題に関しても、もっとも先鋭的な発言さえしている。
「最初に靖国参拝をしたのは私だ。中国は強烈に抗議してきた。その後の首相は、中国側の抗議をおそれて靖国問題をさけてきた。これを、実行した小泉首相は、信念の政治家だ」と最大限の賛美をおくり「中国がいまだに日本に内政干渉めいた発言をつづけるのは、これもやはり戦後処理がされていないという典型的な実例だ」

 中曽根元首相は、中国に対して、直接刺激するような発言はしていないが、野中広務、加藤紘一、古賀誠といった抵抗派が小泉首相の靖国参拝を批判する発言に関して、
「抵抗派は親中国、親北朝鮮派だ」と強烈な皮肉をこめて揶揄している。

 もうひとり、こうした小泉首相の基本の政治理念にかんして、中曽根氏とはちがった形でアプローチし発言してきたのが、後藤田正晴元官房長官だ。
 後藤田氏は日中国交回復をはかった田中角栄元首相のもとで、カミナリ後藤田として、辣腕をふるい、現在も日中友好協会の会長をつとめる。
「現憲法の元で、イラク派遣がきまれば、それは実質的に憲法が改正されたも同然と、うけとめるべきだろう。日本が、戦後、戦争を放棄して経済重点政策をかかげて、平和路線を歩んできた。これに真っ向から、訂正をせまろうとしているのが小泉首相だ」
「小泉政権のもとで、イラク派遣がきまったが、これは、イラクにいくも地獄。いかぬむ地獄になるだろう。小泉首相にとっても地獄だが、国民にとっても地獄になるかもしれない」
 
 北朝鮮の問題をかかえた段階で、日本は米国の支持をえることなしに、拉致問題の解決も、北朝鮮の核の問題も、日朝正常化交渉もできない。この北朝鮮問題とバーターするかたちでの、自衛隊のイラク派遣。
 これを断れば、日本の対北朝鮮外交は、脆弱なものにならざるえない。しかし、国連の決議またずに、米英の独走のかたちではじまったイラク戦争。ここに自衛隊をだすことは、当然、国民の反感をかうことになる。憲法の拡大解釈の限界点をこえてしまうかもしれない。それを、後藤田氏はうれいたのだ。


 だがである。
 国民はいまだに、小泉政権に高い支持率をあたえている。
 小泉政権の最大の後見人と自称している森前首相は、
「純ちゃんのもとで憲法改正がすんなりといってしまうかもしれない」
 とまで、最近もらしている。
 ノミの心臓といわれた森前首相は、北朝鮮との国交正常化、ロシアとの和平条約締結が「小泉政権のもとで実現されるだろう。そうすると純ちゃんは永久のその名前を歴史にとどめる宰相となるだろう」と、それまでいったいた。しかし、その森氏をして、
「小泉政権は、憲法。再軍備という問題にまで踏み込む」可能性を否定しないのだ。
 その最大の根拠が、小泉政権の高い国民の支持率にある。

 ブッシュ政権と小泉政権。
 この朋友関係に関しては、「米国のポチ」という揶揄する表現が定着したように、いまは誰も否定しないだろう。イラクに自衛隊を派遣したその見返りとして、ブッシュは北朝鮮との交渉に関して小泉政権に全面的な協力を約束している・・・・。とみるのが外交筋の常識になっている。

 北朝鮮の「核問題」が現実化すれば、するほど、揶揄し冷やかした「米国のポチ」という小泉首相に対する形容詞は、じつは揶揄以上の、現実の重みをもって日本にのしかかっている。

 この全面的な米国との協力関係の最大の根拠のひとつが、米国が官邸に提示したとされる「レッドライン」(以前記事参照)だ。
 この「レッドライン」とは、ブッシュ新政権が誕生直後に、官邸にもたらした北朝鮮にたいする外交姿勢のひとつ。
「これは、北朝鮮の核関連物資が第三国への移転の兆しがあれば、即座に対応する」というもの。この即座とは、海軍と空軍による空爆。ターゲットは、核関連施設、長距離ミサイルの施設があるとされる10数カ所。米軍によるとその攻撃は、「10数分で完了するだろう」といわれている。

 経済制裁云々という議論以前に、北朝鮮は米国から匕首をつきつけられたことになる。これを背景に、小泉政権は強気の外交政策を、北朝鮮に対してとれるカードをにぎったことになる。(続く)


 文責・北岡隆志