やはりサーベラスは、ごつい会社ですね。
 本日付の日本経済新聞
「クライスラー、サーベラス、9000億円で買収――ダイムラー、19%出資。2007/05/15, , 日本経済新聞 朝刊」(続きに全文転載)

 したそうです。クライスラーといえば、米国の3大自動車メーカー。いわゆるビッグスリー。98年にドイツのダイムラーと合併。ダイムラークライスラー社となったが、業績不振から、北米クライスラー部門を、米投資会社サーベラスに売却することになった。
 98年の米クライスラーと独ダイムラー・ベンツによる「世紀の合併」は相乗効果を上げられず、約9年間の歴史に幕を下ろすことになった。
 米ビッグスリーの経営権を投資ファンドが握るのは初めて。合意によると、持ち株会社となるクライスラー・ホールディングを新設し、サーベラスが子会社を通じて80・1%の株式を取得。ダイムラーも19・9%出資する。

(関連記事は、続きに掲載)

 実は、サーベラスの買収で、意外とみなさんがしらないのは、今年にはいって、松下電器産業の子会社の日本ビクターも、実は、サーベラスが買収しようとしていた。結果的には、サーベラスでなく、投資ファンドのTPG(旧テキサス・パシフィック・グループ)と交渉することになった。
 これは、うちのボスなどが、松下電器の関係者に「サーベラスなんかに売るな!」といってあるいたという、話がないわけもないけど、サーベラスは健在だということがわかる。

関連記事:ビクター売却:売却先、米TPG有力 松下と最終調整、月内にも合意2007/03/16, 毎日新聞 夕刊(続きに全文転載)

 それよりも我々が取材をしていたおどろいたのは、昨年の10月末にブッシュ政権で6月まで財務長官をつとめていた、ジョン・スノー氏が、サーベラスに天下りした事実だった。(米国では天下りとはいわないらしいが)。スノー氏はサーベラス会長に就任した

関連記事:米元財務長官、相次ぎファンド入り――業界、信用力向上狙う。2006/10/30, , 日本経済新聞 朝刊(続きに全文転載)

 われわれが注目したのは、昨年の10月というタイミングだった。

 サーベラスが毎日新聞の記事で、110億円という巨額の損害賠償請求裁判をニューヨークでおこしたがの、昨年の1月19日。
 我々は実質的に、毎日新聞の全面的な敗北とみとめざるえない「和解」が成立したのは、昨年の12月4日。その間に、大物元財務長官をうけいれた。

関連記事:米ファンド:毎日新聞と和解、訴訟取り下げ−−NY連邦地裁2006/12/05, 毎日新聞 朝刊(続きに全文転載)

 この和解案は、

(1)原告であるサーベラス側は、記事で触れられた土地取引の詳細について、関知せず、不適切な行為にはかかわっていなかったとの主張を毎日新聞社は理解する。
(2)毎日新聞社がこうした理解をしたことにかんがみ、サーベラスは、訴訟を取り下げ、同記事について更なる訴えを起こさない
(3)この訴訟に関し、サーベラス、毎日新聞社の双方において、一切の金銭のやり取りは伴わない――

 というもの。

 これは現地ニューヨークで取材するとわかるが、

 米国では「マフィア=暴力団」と取引があるということがわかったら、会社設立の認定を取り消される。

  つまり、サーベラスがおこした毎日新聞への大型訴訟は(110億円を、ニューヨーク連峰地裁でおこす)、会社設立の認定取り消しを逃れるための必死の裁判だったとうけとめることができる。

  日本で、しかも日本語で報じられた毎日新聞の記事に対して、過剰ともいえる反応をしめし、さらに所轄外ともいえるニューヨークで、訴訟をおこしたというのは、それなりの理由があったということがわかる。

  つまり、サーベラスは、毎日新聞との和解案にある文面・・・

原告であるサーベラス側は、記事で触れられた土地取引の詳細について、関知せず、不適切な行為にはかかわっていなかったとの主張を毎日新聞社は理解する

 というのは一毎日新聞社の弱腰や、軟弱ぶりうんぬんよりも、サーベラスにとっては極めて重大な一文だった。まさに、社運を賭した訴訟だったということがわかる。さらにその間に、大物元財務長官をうけいれた。

参考:
 ◇サーべラス・キャピタル・マネジメント
 本社・米ニューヨーク。年金基金などからの委託を受け、高利回りでの資産運用を目指す大手投資会社。世界的に活発なM&A(企業の合併・買収)を展開し、出資先から年600億ドル(約7兆2000億円)超の収入を得ている。日本では破たんした旧日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)を傘下に収めている。

 

クライスラー、サーベラス、9000億円で買収――ダイムラー、19%出資。2007/05/15, , 日本経済新聞 朝刊,

 持ち株会社設立
合併、相乗効果上がらず
 【フランクフルト=後藤未知夫】自動車大手の独ダイムラークライスラーは十四日、業績不振に陥った北米クライスラー部門を米投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメントに売却することで合意したと発表した。売却額は五十五億ユーロ(約九千億円)で、九月末までに完了する見通し。一九九八年の米クライスラーと独ダイムラー・ベンツによる「世紀の合併」は相乗効果を上げられず、約九年間の歴史に幕を下ろす。
 米ビッグスリーの経営権を投資ファンドが握るのは初めて。合意によると、持ち株会社となるクライスラー・ホールディングを新設し、サーベラスが子会社を通じて八〇・一%の株式を取得。ダイムラーも一九・九%出資する。
 持ち株会社はクライスラー、ジープ、ダッジの各ブランドからなる自動車の事業会社に全額出資する。北米などが対象のクライスラーの金融サービス会社も傘下に置く。
 売却額五十五億ユーロのうち、三十七億ユーロはクライスラーの自動車事業、八億ユーロは金融サービス事業に振り向ける。十億ユーロはダイムラーに入る計算だが、ダイムラーはクライスラーの負債削減などで十二億ユーロを超えるリストラ費用を見込んでおり、売却は結果的にダイムラー側の持ち出しになる。約百八十億ドルとされる年金・医療債務はクライスラーが引き継ぐ。
 ダイムラークライスラーは今秋に臨時株主総会を開き、会社名を「ダイムラー」に変更する。主力のメルセデス乗用車部門とクライスラーはエンジン開発や部品の購入、北米を除く地域での販売、金融サービスで協力関係を維持。独南西部シュツットガルトの本社で記者会見したダイムラーのディーター・ツェッチェ社長は「労組・従業員代表も売却を支持した。共同事業を続けるためクライスラーに一部出資する」と説明した。
 クライスラーは二〇〇〇年の業績悪化時に、同社長が部門の最高経営責任者(CEO)として大規模なリストラを実施。サーベラスは、最高執行責任者(COO)だったヴォルフガング・ベルンハルト氏(独フォルクスワーゲン元取締役)を顧問に迎え交渉を進めた。同氏は新会社の経営陣には加わらない。現在のクライスラー部門を統括しているトム・ラソーダ取締役が続投するとみられる。
 九〇年代以降の一連の自動車再編で「号砲」となったダイムラーとクライスラーの合併は解消。独自路線で収益を拡大してきたトヨタ自動車やホンダが勝ち残った格好だ。サーベラスは再建後に株式を公開・転売するとみられ、クライスラーは引き続き自動車再編の目玉になりそうだ。
 クライスラー 一九二五年にウォルター・クライスラー氏が設立。九八年の独ダイムラー・ベンツとの合併以降、ダイムラークライスラーの北米クライスラー部門になる。「クライスラー」「ダッジ」「ジープ」のブランドを抱える。米三位の自動車会社としてビッグスリーの一角を占めていたが、昨年には米新車販売台数でトヨタ自動車に抜かれ、四位に転落。二〇〇六年の売上高は四百七十一億一千六百万ユーロ、営業赤字が十一億一千八百万ユーロ(米国会計基準)。
 サーベラス・キャピタル・マネジメント 一九九二年設立の米大手投資会社。本部ニューヨーク。機関投資家や個人富裕層から資金を集め、医療、建設、金融など幅広い業種の企業再建を手掛ける。自動車関連ではゼネラル・モーターズの金融子会社GMACに出資した。運用資産は約二百億ドル。投資先企業の合計売上高は年六百億ドル。

クライスラーを買う投資家(社説)2007/05/15, , 日本経済新聞 朝刊,


 自動車大手ダイムラークライスラーの北米クライスラー部門が、米投資ファンド、サーベラス・キャピタル・マネジメントの傘下で再建を進めることになった。ガソリン価格の上昇で米消費者の大型車離れが進むなど、クライスラーを取り巻く環境の厳しさに変わりはない。米ビッグスリーの一角であるクライスラーを再生できるかどうか。豊富な資金量で急速に勢力を伸ばしてきた投資ファンドにとっても、真価を問われる買収になる。
 取引のすそ野が広く、多くの雇用を生み出す自動車会社は一国を代表する産業で、以前は陰に陽に政府がひごを与えた。日本でも旧通産省が国産車の振興に力を入れた時代があり、米政府も一九八〇年代にクライスラーを含むビッグスリーを保護するため、日本車に輸出自主規制を求めた。欧州でも仏伊を中心に保護主義的な産業政策が主流だった。
 だが、グローバル化の波はこうした自動車会社の特別な地位を押し流した。ダイムラーがクライスラーを合併した九八年に「国境」の壁が崩れ、サーベラスによる今回のクライスラー買収で、業界再編にファンドが割り込んできた。「何でもあり」の世界的な自由競争が自動車業界に押し寄せたわけだ。
 ただ、クライスラーの再建には荷の重い課題が山積している。事業再生の経験が豊富なサーベラスにとっても一筋縄ではいかないだろう。
 まず直面しそうなのが、退職者向けの年金や医療費負担、いわゆる「レガシーコスト」を巡る全米自動車労組(UAW)との交渉だ。クルマ一台あたり千ドルを超えるともいわれる同コストをどこまで、どう切りつめるのか。サーベラスの出方は、同じ問題に苦しんでいる他のビッグスリー、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターの再建にも影響を及ぼすだろう。
 クライスラーの商品構成は大型車中心で、燃費性能は必ずしも高くない。ガソリン高は販売に逆風だ。車種の構成を転換するには、数年に及ぶ長期間の新車開発プロジェクトが欠かせない。投資を回収するために短期志向の面もあると指摘される投資ファンドが、どこまで長期的姿勢を維持できるかも注目される。

クライスラー売却発表―「世紀の合併」9年で幕、サーベラス、アジア販売強化。2007/05/15, , 日本経済新聞 朝刊,

 ダイムラークライスラーが北米クライスラー部門の売却を発表、米独の自動車大手による「世紀の合併」は約九年で解消が決まった。転売も視野に入れる買い手、米ファンドの再建策は。売り手の思惑は――。大型買収で大手が規模拡大を競った時代の終焉(しゅうえん)を意味するダイムラー解体は、新たな再編劇の幕開けも予感させるが、その行方はまだ深い霧の中にある。(1面参照)
 【ニューヨーク=松浦肇】サーベラスの狙いは、アジア事業のテコ入れと北米事業の再建だ。ダイムラークライスラーが販売・生産に手薄だったアジア地域で販路拡大や提携先を模索する一方、北米では関連企業の垂直統合で生産・販売の固定費の削減を目指す。
 「長期的な視点で経営に集中してもらう」。前米財務長官として知られるサーベラスのジョン・スノー会長は十四日の記者会見でそう強調した。サーベラスに資金を提供している投資家の三分の二超は退職金を運用する年金基金であるため、サーベラスは短期だけでなく長期の収益拡大も追求する戦略とみられる。
 サーベラスが提示した買収価格五十五億ユーロ(約九千億円)は他の買収候補の六千億円前後を引き離し、最有力視されたカナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナルを振り切った。
 日本のあおぞら銀行(旧日本債券信用銀行)へも投資したサーベラスは、アジアで日本勢に押されていたクライスラー・ブランドの売り込みを進めるため、域内の自動車関連企業買収も探る。
 他方、北米では既に経営権を取得したゼネラル・モーターズ(GM)の元金融子会社GMACの販売金融機能を活用、クライスラー・ブランドの販売を促進する。生産から販売までの企業の垂直統合でコスト削減ができるとみている。
 サーベラスは不動産取引に強く、米国では短期売買を狙う「ハゲタカ」のイメージが強かった。だがここ数年は企業買収にシフト。クライスラー買収を米大手買収ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などに対抗する足がかりとしたい考えだ。
 ただ、投資ファンドは通常、三―五年で投資先の売却や株式公開を狙うのが常道。サーベラスの戦略を巡っても、自動車大手への転売や「自動車部門再建が滞れば『ジープ』などのブランド別に切り売りする」といった観測が根強い。
【図・写真】14日、ドイツのシュツットガルトで、クライスラー売却合意を発表する(右から)ダイムラーのツェッチェ社長、サーベラスのスノー会長、クライスラー部門統括のラソーダ氏=ロイター




クライスラー売却発表―誤算のダイムラー、費用持ち出し。2007/05/15, , 日本経済新聞 朝刊,

 【フランクフルト=後藤未知夫】クライスラーは合併三年目に業績が急速に悪化し、大規模な工場閉鎖や人員削減を実行。新型車投入などで持ち直したかにみえたが、二〇〇六年十二月期に三期ぶりに赤字転落すると、前回のリストラを指揮したディーター・ツェッチェ社長は「現状の事業構造では将来も利益を出せない」と見切った。
 しかし、五十五億ユーロでのクライスラー部門の売却も資金の大半は事業会社に振り向けられ、リストラ費用を支出すると結局はダイムラーの持ち出し。一九九八年に買収した際、約三百六十億ドル(現在の為替レートで約四兆三千億円)と評価されたクライスラー部門は、ほとんど付加価値を生まないまま無に帰した格好だ。
 クライスラーを分離してもダイムラーは安泰ではない。一〇%出資していたドイツ銀行が筆頭株主を降り、BMWやフォルクスワーゲンのような安定的な大株主はいない。アナリストは「ダイムラーが買収対象になる可能性もある」という。
 ツェッチェ社長はかねて「株価上昇が最大の買収防衛策」と主張。サーベラスへの売却合意を好感し株価は六〇ユーロを超えるレベルまで上昇したが、メルセデス乗用車とトラックなど商用車を軸にする本業強化へ新たな経営戦略が求められる。

ビクター売却:売却先、米TPG有力 松下と最終調整、月内にも合意2007/03/16, 毎日新聞 夕刊,

 松下電器産業が、子会社の日本ビクターの株式を米投資ファンドのTPG(旧テキサス・パシフィック・グループ)に売却する方向で最終調整に入ったことが16日、分かった。9日の入札でTPGが提示した条件が米投資ファンドのサーベラスを上回った模様だ。売却価格や再建計画など詰めの交渉を進め、今月中の合意を目指す。実現すれば、外資系ファンドによる日本の電機メーカーの初の大型買収となる。
 松下はビクター株の52・4%を保有。ビクターの業績不振が続き、AV(音響・映像)分野での重複も多いことから売却の方針を固め、買収提案の入札を実施していた。
 入札にはTPGとサーベラスが応札。入札価格や再建案など詳細は明らかになっていないが、1株当たりの買い取り価格は、TPGがサーベラスより高い価格を提示したという。松下は保有するビクター株をすべて売却する見通し。
 TPGは今後3〜5年の間に日本で毎年5億〜10億ドルの投資を行うことを表明しており、今月6日には玩具大手のタカラトミーとの資本・事業提携を発表した。ビクター買収が日本での事実上初の大型買収案件となる。【田畑悦郎】
 
米ファンド:毎日新聞と和解、訴訟取り下げ−−NY連邦地裁2006/12/05, 毎日新聞 朝刊,

 米国投資会社のサーベラス・キャピタル・マネジメントとサーベラス・アジア・キャピタル・マネジメント(本部・ニューヨーク)は4日、毎日新聞社を相手にニューヨーク連邦地裁に起こしていた名誉棄損訴訟を取り下げた。
 訴訟の対象となったのは、東京・南青山の土地取引の金銭の流れに関する疑惑を報じた今年1月12日の毎日新聞の記事。双方が和解で合意した。この合意は(1)原告であるサーベラス側は、記事で触れられた土地取引の詳細について、関知せず、不適切な行為にはかかわっていなかったとの主張を毎日新聞社は理解する(2)毎日新聞社がこうした理解をしたことにかんがみ、サーベラスは、訴訟を取り下げ、同記事について更なる訴えを起こさない(3)この訴訟に関し、サーベラス、毎日新聞社の双方において、一切の金銭のやり取りは伴わない――としている。
 サーベラスは1月19日、記事に対し、「名誉を傷つけられ、損害を被った」として1億ドル以上の賠償や訂正記事掲載を求めて提訴していた。
 ◇毎日新聞社社長室広報担当の話
 双方の真摯(しんし)な話し合いにより、争いが解決したと受け止めています




米元財務長官、相次ぎファンド入り――業界、信用力向上狙う。2006/10/30, , 日本経済新聞 朝刊,

スノー氏はサーベラス会長に
 ブッシュ政権で六月まで財務長官を務めたジョン・スノー氏が企業買収ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメント入りすることが明らかになった。クリントン政権時代に財務長官だったローレンス・サマーズ氏もヘッジファンドのDEショー・グループ入りする。“大物”のスカウトで、業界として規制強化を回避する思惑がありそうだ。
 サーベラスはゼネラル・モーターズの金融子会社GMACの買収のほか、日本では西武グループ、あおぞら銀行への出資で知られる。スノー氏は会長に就任する。サマーズ氏はDEショーのマネージング・ディレクター(執行役員に相当)となる。財務長官経験者を迎え入れることで投資家に対する信用力を高める目的もある。
 買収ファンドはプライベート・エクイティカウンシル(PEC)、ヘッジファンドはマネージド・ファンズ・アソシエーション(MFA)をロビー団体としてワシントンDCに設立している。(ニューヨーク=松浦肇)

 

参考記事:問題となった毎日新聞が書いたサーベラスの記事

 

 サーベラス・グループ:子会社、組関係者に手数料 東京・南青山の一等地の地上げで2006/01/12, 毎日新聞 朝刊,

 ◇米ファンド子会社、地上げに絡み
 米国ファンドのサーベラス・グループ(本社・ニューヨーク)系列の不動産会社「昭和地所」(東京都中央区)が行った東京都港区南青山の一等地の地上げに、山口組系暴力団と親しい関係者が関与していた疑惑が浮上した。昭和地所副社長は「適法業者と認識している」としているが、関係者は毎日新聞の取材に暴力団とのつながりについて認めている。サーベラス・グループは、西武グループの再建計画にも乗り出している有名ファンド。しかし、結果的に暴力団に資金が流れた可能性がある。【大平誠、渡辺暖】
 登記簿によると05年5月24日、北海道旭川市の建設業者が同区南青山3に2分の1持ち分として所有していた3筆の土地(計179・79平方メートル)を、滋賀県東近江市の建設業者にいったん移転をした後、同日中にサーベラス・グループ企業の「プロビデンス」(大阪市中央区)にそっくり移転した。この際、やはりグループ傘下の「GAコーポレーション」(東京都千代田区)が、極度額25億円の根抵当を設定した。
 複数の関係者によると、同日、都内の法務局に両建設業者、昭和地所の担当者、司法書士らに加え、暴力団と親しい関係者が集合。いったん東近江市の建設業者が8億3000万円で買い取った後、8億7000万円でプ社に転売。この際、暴力団と親しい関係者が買取額の約3%の仲介手数料を得たという。
 この関係者は毎日新聞の取材に対し、複数の暴力団幹部の実名を挙げながら「組長クラスを含め付き合いの深い知り合いはいる」と親密さを認めた。さらに「旭川の業者と接点のある東近江市の業者に、間に入ってもらった」と説明。近接する南青山3の複数の土地については、「2年半前に知り合った昭和地所副社長と組んで地上げを進め、手数料を得た。プロビデンスはトンネルとして使った」と証言した。
 昭和地所はこれらの近接地に以前から1473平方メートルの土地を所有。周辺は権利関係が複雑になっており、暴力団と親しい関係者は「サーベラスがこの土地を核に、一帯を大規模に地上げする計画と聞いている」と話している。
 これに対し、この副社長は弁護士を通じ売買を認めた上で、「業者が暴力団の関係者という認識は全くないし、支払った手数料は適法、適切だ。自社所有の土地も含め、周辺土地の購入、遊休地の開発で地域貢献するのがデベロッパーの仕事だ」などと答えている。
 副社長は国際興業副社長も兼務。昨年末には西武鉄道の取締役にも就任している。
……………………………………………
 ■ことば
 ◇サーベラス・グループ
 日本貿易振興機構によると、92年に米・ニューヨークに創設された「企業再建、更生ファンド」。帝国ホテル筆頭株主の国際興業、あおぞら銀行、昭和地所を傘下に収め、3月設立予定の西武ホールディングスの筆頭株主になる。 
 

以上