「次から次へと法案を持ってきやがって冗談じゃないよ」
 今、二階俊博自民党国対委員長が怒っているのだ。
 国会が終盤に差し掛かった時、松岡利勝前農水大臣が首つり自殺、さらに年金のデーター5000万件が未処理だという問題が吹き出した。
 これによって安倍晋三内閣の支持率も政権発足維持の70%から30%へと急落。これに慌てた官邸は国民の不安を払拭すると称して社会保険庁を解体・民営化する「社会保険庁関連法案」とそれに続いて「年金時効撤廃法案」を強行採決。
 どうせ野党は数ではかなわないと余勢をかつて「公務員制度関連法案」も強行しようとした。
 これに怒った河野洋平衆議院議長は
「立て続けに2度も強行採決をするのは多数の奢りだと言われる。今度、強行採決をしようとすれば、私自ら辞任するとは言わないが、重大な決意をしますよ。
 第一、今の自民党の多数は安倍総理が取った数ではない。これは小泉前総理が取った数じゃないですか」
 と自民党の数の奢りにクギを刺し、「公務員制度関連法案」の強行可決を止めさせたのである。6月13日成案。所詮は与野党の多勢に無勢・・・・ということか。

 松岡前農水大臣の自殺で『政治と金』が問題になったことから自民党内にも反対論が多かった政治資金規正法改正案を急遽上程。6月12日に衆議院強行突破を目論んだ与党も公の議長の言葉に配慮し、審議時間を取ることとなった。

 

 自民党の国対関係議員が言う。
「全く、官邸はふざけている。国会終盤になって次から次へと思いつきのように法案を持ってくる。
 国会は参議院選挙の関係もあって延長は最大4〜5日しか出来ない。
 そんな日程も頭に入ってないんだ。
 特に塩崎恭久官房長官だ。国会日程も考えずいい気になって『これは安倍総理が望んでいる重要法案だ。とにかくやってくれ』と強行に言ってくる。
 安倍晋三総理ー塩崎恭久官房長官ー下村博文官房副長官の官邸ラインは全くのド素人。
 この3人はこれまで大臣も国対もやったことがないので法案審議がどうなるか考えたこともないんだろう。全くどうしようもないよ」

 その塩崎官房長官は
「この法案はどうも通りそうもないナーと思う物も二階国対委員長が通してくれるのでありがたい」
 と実にノー天気。

 重要法案といえども衆議院を強行通過させればいいという物じゃない。法案は参議院本会議で可決してこそ成立する物だ。
 
 国会会期末は6月23日である。
 安倍内閣の重要法案は
1,公務員制度改革関連法案
2,政治資金法改正案
3,教育改革関連法案
4,イラク復興支援特措法改正案
5,社会保険庁改革関連法案
6,年金時効撤廃特例法案
7,労働関連3法案
8,放送法改正案
 などである。
 残り数日でこれらを一気にかたづけようというのだから、参議院も大変だ。

「安倍内閣の支持率が急落し自民党の支持率も落ちている中で我々は選挙をしなければならない。そんな時に重要法案だから強行してでも成立させろという方がどうかしている。
 今、参議院では今度改選になる議員は地元に張り付き東京には戻ってこないというのが現状だ。そんな時に強行採決連発で法案を成立させたらまた国民の反発を買って内閣支持率が低下、さらに自民党の支持率が低下。
 それは取りも直さず自分の落選に繋がると言うことだ。
 4〜5日の会期延長をしたところで、野党側が委員長や大臣の解任決議案を出したり、最後には内閣不信任案や内閣問責決議案をだして抵抗することは必至。こうなれば国会審議は中断する。
 安倍総理がどうしてもやりたいという教育改革関連法案と社保庁改革関連法案というようにターゲットを絞ってやるしかない。
 後は廃案にあることもしょうがないと思う。
 ともかく、参議院選挙に勝つのが最優先だ」
 自民党の参議院議員が呆れて言うのだ。


 6月4日、衆議院議員会館の地下にある土産物売り場に「安倍ちゃん人形」なる安倍総理の顔を模したダッコちゃん人形が出現した。
 安倍人気低下の今頃に出現してもあまり売れないようだが売店のおばさんは
「一日に数個は売れていますよ」
 と。見物客の中には「物好き」もいるようだが、あまり儲かりそうもない。
 安倍人気を意識しているのかどうか第一議員会館の安倍事務所入口の柱には「安倍ちゃん人形」がしっかりと抱きついている。
 ちなみに売店では麻生太郎関連の食べ物の方が売れ行きがいいとか・・。


 永田町ではまた、安倍総理支持率低下に輪をかけた話で盛り上がっている。
「安倍総理の政策秘書だった飯塚洋の息子が不登校を繰り返し中学生の少女を監禁・強姦していた」という話。
「中学生同士なら淫行にならないよな」とか「2人の親は一体何をやっていたのだろう」「安倍総理は拉致を許さないというのに自分の足元でそんなことがあったとすれば大変だろう」
 などなど。

 「安倍晋三さんは選挙に強い顔だから総理に選んだはずなのに、参議院選挙は自民党が惨敗という予測があるのはどういうわけだ」
  片山虎之助参議院幹事長の苦戦も予想されるほど自民党参議院は怒っている。

 自民党は「年金は大丈夫だ」というチラシを配ったが、「年金問題は菅直人が厚生大臣の時に起こったこと。元凶は菅元大臣にある」
 と。これが実に評判が悪い。
 このチラシは片山さつき広報委員長が作成した物。
 年金への国民の怒りが分からない片山さつきを広報委員長に選んだのも安倍総理だった。
 お友達と論功行賞だけで作った安倍内閣。
 7月22日の参議院選挙でツケが回る?

取材:辻野匠師、その他