【時代小説発掘】
薩摩いろは歌 雌伏編(一)       
古賀宣子



(時代小説発掘というコーナーができた経緯)


梗概:

 大久保利通の原点は「お由羅騒動」ではなかったか。喜界島遠島に処せられた父次右衛門は、流人船で発つ日の朝、正助(大久保利通)とその盟友西郷吉之助に、果たせなかった志を託していく。

・・・・正助は両拳を強く握り締め、錦江湾を進みいく船尾を食い入るように見つめていた。今朝方の父の言葉が蘇る。
「此度の騒動が発覚した一番の因(もと)は、近藤様のご性格にある」
 高崎五郎右衛門とともに自刃した近藤隆左衛門は、物頭町奉行を勤めていた人だ。斉彬襲封に向けて、ことが思うように進まぬため、焦り、激した挙句の猪突猛進振りを、父は指摘した。
「企ては発覚しては何もならぬ。慎重に、念には念を入れど。激しては負けだ」
 よいな。父は吉之助と正助を見据えて、無言で命じた・・・・(本文より)

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薩摩いろは歌 雌伏編(一) 2010年8月8日