ボスのお母様というのは、紫山流の晩景の教授で、80歳をこえた今でも、旭川の護国神社には、毎年奉納展示会をされ、毎年9月には、お弟子さんもふくめて展示会をされている。
参考:紫山流松永社中習作展・・・ボスのお母様の展示会 2006年10月25日
3年前にお父様が亡くなられ、旭川で一人暮らしをされているけれど、それは素晴らしいお母様だ。なんで、こんな素晴らしいご両親から、ボスみたいな愚息ができてしまうのか?世の中は理不尽である。
お母様は、年に2度ほどは上京される。紫山流の総会があるとか、宗家様との打ち合わせとか、別にボスに会いにくるわけではないようだ。そして、当方の事務所にも顔をだす。これは、非常に楽しみで、北海道の毛蟹とか、イクラとか、ジンギスカンとか差し入れてくれるのである。
そこで、おもしろいことをされる。
事務所に新人がいるとわかると、その新人に一冊の本をプレゼントするのだ。
その本は決まっている。
福沢諭吉の「学問のすすめ」である。
というオレも、実は、お母様から、「学問のすすめ」をプレゼントしてもらった。
福沢諭吉といっても、お母様が、慶応と関係あるわけでない。
故お父様は、早稲田だし、うちのボスは、中央大学除籍である。
しかし、なぜか「学問のすすめ」なのだ。
ボスにきいたところ、
「うん?なんでも初恋の人が慶応だったらしい。学徒出陣で沖縄で戦死した。旭川出身のひとだったから、旭川の護国神社に祀られたらしい。なんでも、最後に会ったときに、手も握らずに、恥ずかしそうに『学問のすすめ』を母に渡したらしい。それ以来、何かあると人に『学問のすすめ』を渡す。こまった習慣だ」(ボス談)
別に困った習慣でない。やはりうちのボスは親不孝だ!
実はお母様からいただいてはじめて「学問のすすめ」をよんだ。
いや、これはいい本なのだ。
福沢諭吉という人は、お国やお上にあれこれいうのでなくて、国民にあれこれいった。
お母様によると、「人は何かあるとすぐに、政治が悪いとか、国がわるいとか、いうけれど、本当は、自分自身のあり方を、反省したほうがいい場合が多い。ですから、他加志(ボスの事)にも、何でも権力や政治にせいにするだけの記事を書かないようにお願いしています」
うむ・・・・・・。これはまいった・・・・とおもったものだ。
ボスのお母様は、やはりただ者でない。
うちのボスはろくでもないけど。
さらにお母様はつづける。
「『学問のすすめ』は、当時で350万部もうれたのです。当時の日本人の人口が3500万人ぐらい。10人に1人が読んだことになります。これほどのベストセラーはないでしょう。つまり、当時の日本の国民も偉かったのです。これは元の彼氏からの受け売りですけれど・・・」とはにかむ。
元の彼氏という表現がいい。
オレは、ただただ、感服したのだ。
そうしたら、以下の本をみつけた。
あの白州次郎さんについて書いた北康利さんの近著だ。
「国を支えて、国を頼らず」といきなりきた。
オレは早速、「学問のすすめ」のお返しとして、お母様にプレゼントしたのだ。
学問のすすめは、ウィキペディアによると、
原則的にそれぞれ独立した17つのテーマからなる、初編から十七編の17の分冊であった。 1872年(明治5年2月)初編出版。以降、1876年(明治9年11月25日)十七編出版を以って一応の完成をみた。その後1880年(明治13年)に「合本學問之勸序」という前書きを加え、一冊の本に合本された。その前書きによると初出版以来8年間で合計約70万冊が売れたとの事である。
最終的には300万部以上売れたとされ、当時の日本の人口が3000万人程であったから実に10人に1人が読んだことになる。現在のような大規模な流通販路の確保や広告宣伝が難しかった時代においては驚異的ベストセラーであったと言える。
以下は「学問のすすめ」からの抜粋である。
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず__人は生まれながら貴賎上下の差別ない。けれども今広くこの人間世界を見渡すと、賢い人愚かな人貧乏な人金持ちの人身分の高い人低い人とある。その違いは何だろう?。それは甚だ明らかだ。賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとに由ってできるものなのだ。人は生まれながらにして貴賎上下の別はないけれどただ学問を勤めて物事をよく知るものは貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるのだ。」
「政治は国民の上で成り立っており、愚かな人の上には厳しい政府ができ、優れた人の上には良い政府ができる。法律も国民の行いによって変わるもので、単に学ぶ事を知らず無知であるのに強訴や一揆などを行ったり、自分に都合の良い事ばかりを言う事は恥知らずではないか。法律で守られた生活を送っていながら、それに感謝をせず自分の欲望を満たすために法律を破る事は辻褄の合わない事だ。」
そこでオレからの、皆様のへのプレゼントである。
以前、「蟹工船」でお世話になったインターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)さんが、「学問のすすめ」を全文掲載してくれている。いわゆる著作権切れである。
蟹工船については:小林多喜二著 「蟹工船」全文掲載 2007年02月21日
今回も、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)さんの好意により、別館で「学問のすすめ」を全文公開させていただきました。
ぜひ、読んでください。
学問のすすめ1 福沢諭吉
学問のすすめ2 福沢諭吉
学問のすすめ3 福沢諭吉
学問のすすめ4 福沢諭吉
学問のすすめ5 福沢諭吉
学問のすすめ6 福沢諭吉
以上