2CHに「レキジョ」という用語があるらしい。
 どうやら、「歴女」の略らしい。
 有名なところでは、変態毎日新聞を追い込んだ「鬼女」=「既婚女性」というのがあるのだけど、こんどは「レキジョ」である。

 そこで、話題になっているのが、「愛新覚羅 王女の悲劇―川島芳子の謎」という書籍である。

愛新覚羅 王女の悲劇―川島芳子の謎愛新覚羅 王女の悲劇―川島芳子の謎
著者:太田 尚樹
販売元:講談社
発売日:2009-01-31
おすすめ度:5.0
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参考:


川島芳子はレキジョのアイドル 2009/04/17

2ちゃんねるには何でもあるんだが、世界史板というのもあります。世界史というと、ちょつと堅苦しい感じもあるんだが、実は「レキジョ」の巣窟です。レキジョってのは、最近、流行ってるらしいね。歴史好きのオンナたち。歴史好きだからって、爺さんばかりじゃないぞ、うら若き美少女なんぞも、口から泡飛ばして、歴史について熱く語り合っている。で、川島芳子なんだが、なんたって、
命懸けでコスプレ通した薄幸の王女だから、人気が出ないわけがない。

男装の麗人・川島芳子 2009/04/15

川島芳子とは何者か? と、その前に川島浪速という人について語らなきゃならないわけだが、川島浪速というのは松本藩出身の大陸浪人で、満蒙独立運動家です。芳子というのは、その養子です。


 話題になっている「愛新覚羅 王女の悲劇―川島芳子の謎」という書籍だが、この筆者は太田尚樹氏

太田氏のプロフィールは、
太田尚樹(おおた なおき、1941年 - )は東海大学名誉教授、青山学院大学講師。東京水産大学卒業、渡米し米国サンフランシスコ大学、カリフォルニア大学バークレー校に留学、その後スペインのマドリード大学に留学。専門を南欧文明史としていたが、近年は昭和の歴史をテーマとする歴史ノンフィクションの分野における活動が続いている。スペイン史学会およびスペイン中近世史研究会会員、東京都出身。


 実は、うちのボスや北岡記者は密かな愛読者である。
 まったくこんな、おもしろい本を密かによんでいたとはけしからん。
 太田氏のプロフィールをみると、肩書きが東海大学名誉教授。どうも、この名誉教授という肩書きはよくない。爺臭いというか、保守的というか、象牙の塔の臭いがする。

 ところが、太田氏の著作というか、ノンフィクションノベルはまったく別物である。
 まず、文章が若々しい。学者先生の書く「論文」とはまったくちがう。もちろん、太田氏は、学術論文もたくさん発表しているのだが・・・・。

 なるほど、うちのボスがはまりそうな著作なのである。
 ということで、図々しいボスは、一度も面識がないのに、太田先生に原稿を依頼した。
 そして、太田氏は、「自薦の弁」を書いてくれたのだ。
 ネットの力はすさまじい。
 あ・・・・けっしてうちのボスが素晴らしいというわけでないので、勘違いしないように・・・・。

 以下、太田尚樹氏からの寄稿。

愛新覚羅 王女の悲劇―川島芳子の謎」 自薦の弁



『愛新覚羅 王女の悲劇 川島芳子の謎』 (講談社 1995円)
太田尚樹(東海大学名誉教授)

 私は今年に入って、先の本を出しました。
 主人公の川島芳子は、ラストエンペラー溥儀の一族に生まれ、日本で育っていますが、謎に包まれた上に毒を持った女で、男勝りの活躍をするところが最大の魅力になっています。
 満州事変、上海事変では弾雨の中を掻い潜って日本軍のためにスパイ活動したかと思えば、一軍を率いて大陸を疾走する彼女にはロマンが漂っているだけでなく、男と女の壁を超えた華のある風雲児です。

 曰く「東洋のマタハリ」、「アジアのジャンヌ・ダルク」、さらには「男装の麗人」。
 登場人物も東条英機から板垣征四郎、石原莞爾、甘粕正彦、皇帝溥儀、松岡洋右、笹川良一、頭山満、犬養毅、李香蘭(山口淑子)と多彩ですが、彼らと濃い密度で関わりながら、過酷な時代を全力で駆け抜けた異端ぶりを発揮します。

 しかもこの顔ぶれを見ただけでも、彼女の生涯が昭和史そのものであることがお分かり頂けると思います。実際、彼女は昭和史と同じ軌跡を辿り、同じ運命を共有したことは、われわれ日本人には、感慨深いものがあります。

 川島芳子は祖地満州の大地に理想国家建設のために働いたのですが、成った満州国は日本の傀儡国家であったことに失望し、関東軍に利用された我が身に憤る。この頃の芳子は自分は中国人か、満州人なのか、日本人なのか、そのいずれにも属さないもどかしさに苦しむことになります。
 
 そして日本の敗戦。北京で国民党に捕らわれた芳子は、死刑判決を受けて銃殺されたことになっていますが、本書では綿密な資料のもとに、戦後も生きながらえていたという筋書きで書かれています。

 彼女が駿馬を駆って、赤い大きな夕陽が沈んでいく満州や蒙古の地平線の彼方に消えていく姿には、映画「シェーン」のラストシーンのように心打たれるものがあります。

 謎のある人間には魅力があるものですが、川島芳子のような女が再び出てきたら困るという人もいるでしょう。
 しかし先日ある方から、次のような感想文を頂きました。

「暗い今の世の中、インテリのペシミズムなんて何の役にもたたない。むしろ川島芳子のような規格外の人間のオプティミズムが求められているのではないでしょうか」

 まったく同感です。


 太田氏の著作だが、うちのサイトの読者なら、これだけでなくて絶対に見逃がすことができない著作がある。
 多数のノンフィクション・ノベルがあるが、ボスが厳選する3冊は以下。

 

死は易きことなり―陸軍大将山下奉文の決断死は易きことなり―陸軍大将山下奉文の決断
著者:太田 尚樹
販売元:講談社
発売日:2005-02
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満州裏史―甘粕正彦と岸信介が背負ったもの満州裏史―甘粕正彦と岸信介が背負ったもの
著者:太田 尚樹
販売元:講談社
発売日:2005-11
おすすめ度:3.0
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ヨーロッパに消えたサムライたちヨーロッパに消えたサムライたち
著者:太田 尚樹
販売元:角川書店
発売日:1999-07
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以上