瞼の母―長谷川伸傑作選瞼の母―長谷川伸傑作選
著者:長谷川 伸
販売元:国書刊行会
発売日:2008-05
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日本敵討ち異相 (長谷川伸傑作選)日本敵討ち異相 (長谷川伸傑作選)
著者:長谷川 伸
販売元:国書刊行会
発売日:2008-09
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長谷川伸論―義理人情とはなにか (岩波現代文庫)長谷川伸論―義理人情とはなにか (岩波現代文庫)
著者:佐藤 忠男
販売元:岩波書店
発売日:2004-05
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  ボスとか辻野記者の年代(50歳以上限定)というのは、だいたいろくでもないのだが、しかし、とんでもない知識や、とんでもないことをよく知っている。いわゆるネットがない時代だから、やたらめったらと本を読んでいるのだ。
 そこで、「ノーガキおじさんといわれる」(釜台記者談)
 日本文学選集とか、世界文学選集、マルエン選集、世界哲学選集、世界SF選集、日本昔話、少年少女文学全集とか、世界エロ文学選集とか、小沢一郎さん愛読の「ローマ帝国衰亡史」とか・・・。

 

 そういえば、先の総選挙で小沢チルドレンがたくさんふえたが、その人にあうたびに、「その、君はだな、ギボンの『ローマ帝国衰亡史』は読んでいるか?」と質問するのは当方のボスである。今のところ、誰も読んでいない。
「それはいけない。およそ小沢一郎を理解するには、小沢塾でつまらない政治経済のレクをうけるよりも「ローマ帝国衰亡史」を読んだ方が、100倍小沢さんがわかる。なんせ小沢一郎さんの愛読書なのだ」(当方ボス談)
 という具合である。

 記者にしても、作家にしても、その人なりの文体というのがある。
 そして、著名といわれている記者や作家は、たいていどこかの過去の作家や作品の影響をうけているものだ。
 たとえば、今、人気の太宰治にしても、その文体は「ブログに近い」といわれているが、中学生にして太宰治全集を完読したボスにいわせると「歌舞伎、義太夫、落語につかわれる話し言葉が下敷き。だから、太宰を超えたいとおもっているブロガーさんがいるのであれば、歌舞伎や義太夫、落語を読むといい」(当方ボス談)
 つまり、日本の庶民文化にその原型があるのだ。
 いっておくけれど、西欧からきた翻訳ものの散文ばかりを読んでいると大江健三郎のような悪文を書くようになるらしいから、注意したい・・・そうだ。

 昔から、物書きをめざすなら、「落語をよめ!」といわれた。
 しかし、今の時代、ちょっと気のきいた物書きなら「落語」は吸収済みである。そこで、盲点ともいえるアンチョコとして、若手の記者に最近、すすめているのが「長谷川伸」の作品なのだ。
 長谷川伸ときいて「瞼の母」ととっさに思い出すのは、まだ、ビギナーらしい。「名作だが、あれはほんのさわりである。いわゆる股旅物を読まなくして、なんの長谷川伸よ。日本人にうまれて日本語でよめて、よかったとおもえるのが長谷川伸の作品なのだ」(辻野記者談)


 

長谷川伸

 長谷川 伸(はせがわ しん、明治17年(1884年)3月15日 - 昭和38年(1963年)6月11日)は日本の小説家、劇作家である。本名、伸二郎(しんじろう)。ほかの筆名に山野芋作、長谷川芋生、春風楼、浜の里人、漫々亭、冷々亭、冷々亭主人などがある。
 「股旅物」の発明者であり、その作中に登場する「仁義」は実家が没落して若い頃に人夫ぐらしをしていた際に覚えたものをモデルにしたという。
 実家が没落したため船渠勤め等に従事。明治44年(1911年)から都新聞社(現・東京新聞)の演芸欄を担当する記者となる。
 また主宰していた文学学校(勉強会)「新鷹会」の門下生には長谷川幸延、村上元三、山手樹一郎、山岡荘八、戸川幸夫、平岩弓枝、池波正太郎、西村京太郎らがおり、大衆文芸・演劇などに多大な活動をしてゆく。
 また各地方における地方史の研究に関しても、彼の門下生は多大の貢献をしている・・・・


 「だいたいだな?昨今の若手の記者が簡単に日教組教育に毒されたまま、ジャーナリズム活動をしているというのは、こうした古典にふれる機会がなかったからだ。まずは、長谷川伸あたりよんで、義理と人情の機微にふれると、あなたの文体も、取材能力も格段とあがるであろう。さらに日教組教育がなぜいびつかもわかるであろう」(当方ボス談)
 といっていますが、なんで、日教組になるのか、わかりません。

 長谷川伸さんについて、読んだり、調べたりすると門下生がたくさんいることがわかる。彼は後輩の育成にも大変に尽力したのだ。
 そのひとつに長谷川伸が遺した財産で運営されている新鷹会(しんようかい)というのがある。
 現在、理事長は平岩弓枝さんだ。
 長谷川伸をよんだら、次は、この新鷹会(しんようかい)のアンソロジーをよむと大変おもしろい。
 最近だと、「花と剣と侍」がおすすめ。



花と剣と侍―新鷹会・傑作時代小説選 (光文社時代小説文庫)
花と剣と侍―新鷹会・傑作時代小説選 (光文社時代小説文庫)
著者:平岩 弓枝
販売元:光文社
発売日:2009-06-11
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【内容情報】

千葉道場“芸武館”で塾頭までつとめた草莽の志士の軌跡を描く「真田範之助」、凄腕の渡世人・追分の伊三蔵の秘められた悲惨な過去とは?「ひとり狼」。手先の器用さがわざわいして職人となった元赤穂藩士が、討ち入りの陰で活躍する「舞台うらの男」。大川端の破れ舟で毒殺された髪結い職人の謎を追う「子を思う闇」など、粒選りの時代小説九篇と書下ろし三篇を収録。

【目次】

真田範之助(長谷川伸)/ひとり狼(村上元三)/霧の中(山手樹一郎)/舞台うらの男(池波正太郎)/京の夢(戸部新十郎)/五人の武士(武田八洲満)/人間の情景(野村敏雄)/男谷精一郎信友(戸川幸夫)/海賊船ドクター・サイゾー(松岡弘一)/深川形櫛(古賀宣子)/末期の夢(鎌田樹)/子を思う闇(平岩弓枝)

 この中で、おすすめは、古賀宣子の「深川形櫛」か?
 まだ、ほとんどの人がしらないから、おもしろいのである。
 つまり、「オレがみっけた!」という快感を味わえるのである。

 今回、新鷹会(しんようかい)のアンソロジーを読んだ当方のボスであるが、

「うん?時代小説の書き手がいなくなっているといわれているが、そんなことはないな。まだまだ、書き手がたくさんいる。
 うちの有料サイトで、こうした時代小説の書き手さんに、新作をかいてもらうわけにはいかないか?よし、おまえ、ちょっと研究してこい」

 と言い残して、週末の恒例の千葉の蟄居部屋へむかったボスでした。


以上